Oyado Onn Nakatsugawa
Oyado Onn Nakatsugawa
お宿Onn 中津川
- Category: Shared Space
- Date: september, 2022
- Location: Nakatsugawa,Gifu
- Web: https://www.onn-nakatsugawa.com/
- Photographer: Masao Nishikawa
中津川は岐阜県東部に位置し、古くから信仰の対象であった恵那山の裾野の北側に、かつての中山道の宿場町中津川宿として栄えた地域である。
古くから木曽檜の産地の一つでもあり、丸山木材ホールディングスもこの地で約100年、森林経営を行い続けてきた企業である。
敷地はこうした中津川の中心的な場所である、旧中山道沿いの一角にある。残念ながら当時の宿場町の面影を残す場所は、敷地から少し離れており、周囲は昭和の商店街の空気感を漂わせている。一方で地形は恵那山にむけて緩やかな勾配となっており、この地が恵那山の裾野に発展してきた街であることを今に伝えている。
そこで今回私たちは、この地形とヒノキを設計の出発点とし、少し人通りが少なくなった旧中山道に新たな刺激を与える建築を作ることにした。
まず行ったのは、1階共用部を地形と連続させることである。1F部分を上層部よりインセットし、ピロティ状の空間を作り、さらにコンクリートの壁や格天井などのエレメントを、内外に貫通させ、連続感を高めた。内部では複数のレベルの床を地形に沿って階段やスロープで繋ぎ、恵那山へ登る地形を再現している。ヒノキについては、鉄骨を支える木構造の柱(燃エンウッド)・前述の格天井・なぐり加工の床・飲食スペースの腰壁・レジンで固めた受付カウンター・製材所の雰囲気を再現したアートワーク・大浴場の衝立など、さまざまな要素をこの地形の中に散りばめ、山の斜面にヒノキを植林するようなイメージで空間を構成した。
2階〜5階については、ホテルというビルディングタイプの特性上、客室が主体だが、各階のエレベーターホールに燃エンウッドを使用している他、標準客室と3種類の特別客室とで、ヒノキを全く別の魅力を引き立てる形で利用し、1階と同様、多様なヒノキの森となるようデザインした。
客室フロアの計画面に関しては、低層階では敷地いっぱいにボリュームを張り出し、奥行きの長い客室とした上で窓を小さくし、すぐそばに迫った隣家を気にならなくする一方、上層階では奥行きを短くし、水平に連続した窓とすることで、景色を、思う存分楽しめるよう意図した。これにより外観の形状は、スケールダウンしたいくつかのボリュームに分割され、旧中山道の街並みに程よく馴染みつつ新しいインパクトを与えている。
このホテルが、旧中山道の賑わいをつくり街の誇りとなってゆくことを願っている。